特集 眼感染症診療ガイド
II.診断・治療のポイント
ぶどう膜・網膜
眼イヌ回虫症
佐藤 達彦
1
1社会保険紀南綜合病院眼科
pp.208-211
発行日 2003年10月30日
Published Date 2003/10/30
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1410101456
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はじめに
寄生虫にはおのおの固有の宿主特異性があり,通常その固有宿主(終宿主)の体内で成虫となり寄生する。しかし,本来ヒトを終宿主としない寄生虫が偶然にも虫卵や幼虫の段階でヒトの体内に迷入した場合,ヒトの体内で幼虫のまま長期間生存し,体内を移行することによりさまざまな臨床症状を示すことがあり,これを幼虫移行症(larva migrans)という。
イヌ回虫症とは仔犬を終宿主とするイヌ回虫(Toxocara canis)の第2期幼虫による幼虫移行症で,眼内へ幼虫が移行したものを眼イヌ回虫症という。1950年,Wilder1)により網膜芽細胞腫の診断で摘出された46例の小児眼球のうち24例から寄生虫が認められたことが初めて報告され,1956年にNicoles2)によりイヌ回虫の幼虫が同定された。わが国でも,1966年に吉岡3)が網膜膠腫と診断して摘出した眼球からイヌ回虫の幼虫を同定し,病理組織学的に確定診断がなされた貴重な報告がある。
現在,診断技術の向上に伴い,またペットブームや食生活の多様化に伴いイヌ回虫症と診断される症例は増加傾向にあり,注目すべき疾患の1つである。
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