特集 手術のタイミングとポイント
Ⅵ.涙器・眼窩
涙道閉鎖に対する術式選択のポイント
木下 慎介
1
,
柿崎 裕彦
1
1愛知医科大学眼科学教室
pp.291-295
発行日 2006年10月30日
Published Date 2006/10/30
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1410101006
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はじめに
成人の涙道閉塞に対する手術術式を適切に選択するためには,はじめに涙道閉塞の原因,状態,そして流涙の種類を理解しておかなくてはならない。
涙道閉塞の原因は,原発性と続発性の2つに分類することができる。原発性涙道閉塞では明らかな原因は不明で,さまざまな程度の炎症または線維化が存在する1)。続発性涙道閉塞は感染性,炎症性,腫瘍性,外傷性,機械的の5つに分類され2),これらの要因が複雑に絡み合っている。
涙道閉塞の状態に関して,機能的閉塞と器質的閉塞の2つの状態が存在する3)。機能的閉塞では,涙道の連続性は保たれているにもかかわらず,通過障害が存在する。すなわち,通水は可能であるが生理的導涙が不能となっている状態である。器質的閉塞は,何らかの原因で涙道の連続性が絶たれた状態である。
流涙は,導涙性流涙と分泌性流涙とに分類される。導涙性流涙は導涙機構の障害によって生じ,その原因は涙道の閉塞,涙道の異所性開口,導涙機能の減弱,消失などである4)。導涙機構の障害は,ホルネル筋(眼輪筋涙部)の収縮5)が減弱・消失するために生じる。分泌性流涙は,涙液分泌反射の反射弓が刺激されて流涙を生じたものである3)。導涙性流涙と分泌性流涙では治療方針がまったく異なるため,適切な検査を行い,両者を鑑別することが必要である。
以下,診察,術式選択のポイントをその流れに沿って説明する。
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