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特集 第59回日本臨床眼科学会講演集 (2)
特別講演
アトピー性皮膚炎における眼合併症と諸問題
Ocular complications and conditions in atopic dermatitis
臼井 正彦
1
Masahiko Usui
1
1東京医科大学眼科学教室
pp.442-455
発行日 2006年4月15日
Published Date 2006/4/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1410100401
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わが国における戦後60年の社会ならびに住宅環境などの変化は,アトピー性皮膚炎(AD)患者の増加をもたらし,同時に本症に伴う白内障や網膜剝離などの眼合併症の増加にも大きく関連してきた。一般にADにおける眼合併症は20歳代を中心とする若年者に起きることが多く,これに起因する視機能障害は就学ならびに就業において大きな社会問題にもなっている。また,わが国におけるADの眼合併症についての報告は20世紀初頭から散発的にあるが,1980年代の前半から報告が多くなり,後半から急激に増加し,1990年代後半に最多となっている。しかし,欧米諸国におけるADに伴う白内障や網膜剝離の報告はそれほど多くないことから,ADによる眼合併症の増加は社会的にも眼科学的にもわが国における特有な現象で,ある意味では20世紀末の新興眼疾患の様相を呈しているといっても過言ではない。
本稿では,ADにおける外眼部環境である結膜囊の常在細菌をはじめ合併症である角結膜炎,円錐角膜,白内障,網膜・毛様体病変についての諸問題を取り上げ,検討した結果を述べた。また,アトピー白内障の発生機序についての動物実験を行い,ADにみられる顔面皮疹への搔破や叩打癖が合併症発症の主因であることを強調し,眼部への搔破や叩打をしないように啓蒙した。
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