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はじめに
糖尿病網膜症は,まず毛細血管瘤の形成から始まり,次に血管瘤からの出血や血漿成分の漏出による網膜浮腫を生じる。さらに血栓や血球による毛細血管閉塞から網膜虚血,血管新生へと進行する。特に血管新生は,放置すると硝子体出血や血管新生緑内障を引き起こし急速に失明に至る病態である。
これまでにさまざまな増殖因子(growth factor)が糖尿病網膜症の血管病変に関係していると報告されてきた1,2)。例えば,網膜神経細胞に含まれ,細胞が破壊されたときに血管新生を誘導する塩基性線維芽細胞成長因子(basic fibroblast growth factor:bFGF),成長ホルモン依存的に網膜血管新生を制御しているといわれているインスリン様成長因子1(insulin-like growth factor-1:IGF-1),結合組織増殖因子(connective tissue growth factor:CTGF)などの他の増殖因子や細胞外マトリックスの発現を誘導することにより血管を制御するトランスフォーミング増殖因子β(transforming growth factor-β:TGFβ),内因性の血管新生抑制因子として最近有名となった色素上皮由来因子(pigment epithelium derived factor:PEDF)などである。しかしこれらの増殖因子のなかでも血管内皮増殖因子(vascular endothelial growth factor:VEGF)が最も重要であると現在のところ考えられている。なぜなら糖尿病網膜症の特徴的な病理学的変化である血管透過性の亢進と血管新生の両方の作用をもち,高血糖や低酸素下で発現の亢進が認められるからである(図1)。
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