特集 眼科における最新医工学
IV.生体材料工学
細胞シート工学・角膜移植・組織工学
大和 雅之
1
,
西田 幸二
2
1東京女子医科大学先端生命医科学研究所
2大阪大学大学院医学系研究科感覚器外科学講座(眼科学)
pp.313-321
発行日 2005年10月30日
Published Date 2005/10/30
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1410100229
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第一世代型組織工学
細胞成長因子や細胞を用いて組織構造を再生させる新しい技術である組織工学を中核技術とする再生医療が近年,大きな注目を集めている。骨髄中の造血幹細胞を移植することにより造血系の再生が可能であることは古くから知られていたが,組織としての形態をもたない血液とは異なり,他の組織・臓器では細胞懸濁液の注射だけでは多くの場合で十分な組織再生が期待できず,何らかの方法により培養系で部分的にでも組織構造を再建し,これを移植する新技術に大きな期待が寄せられていた。
Greenらの研究から,マウス胎児由来の線維芽細胞である3T3細胞に致死量のX線照射を行い,これをフィーダーレイヤーとして用いる共培養により,微量のヒト皮膚表皮細胞から移植に耐えうる重層扁平上皮組織を作製できることが明らかになり1),1980年頃より熱傷や巨大母斑の皮膚治療などで臨床応用が開始された2)。具体的には,微生物由来の蛋白質分解酵素であるディスパーゼ処理により上皮組織を真皮から脱着させ,得られた上皮組織をトリプシン処理によりばらばらにして培養皿に播種する。この方法で,切手大の皮膚片から約1か月でテニスコート大の培養表皮が作製可能である。Genzyme社のEpiCelなど,欧米では病院で患者自身から採取した皮膚小片から表皮細胞を単離し,これを培養して培養表皮とし病院に戻す培養代行サービスが商業化されている。同様の培養代行サービスは軟骨でも商業化されている。
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