綜説
角膜上皮細胞シート移植の現状と展望
大家 義則
1
1大阪大学大学院医学系研究科脳神経感覚器外科学(眼科学)
キーワード:
角膜上皮
,
培養細胞シート移植
,
角膜上皮幹細胞疲弊症
Keyword:
角膜上皮
,
培養細胞シート移植
,
角膜上皮幹細胞疲弊症
pp.563-566
発行日 2024年6月5日
Published Date 2024/6/5
DOI https://doi.org/10.18888/ga.0000003657
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培養上皮細胞シート移植の適応疾患は角膜上皮幹細胞疲弊症である。これは角膜輪部に存在する角膜上皮幹細胞が部分的あるいは完全に消失した状態であり,角膜上には血管を伴った結膜上皮が侵入して混濁し,重篤な視力低下を引き起こす(図1)。この疾患に対して従来は,アイバンクへ献眼のあった角膜を用いた他家角膜輪部移植を行ってきたが,拒絶反応や感染性角膜炎などの術後合併症の発生率が高いことが知られており,予後が極めて不良である。本疾患は重症ドライアイ,慢性炎症,睫毛乱生,眼瞼異常などを合併することが多く,最重症眼表面疾患のひとつと考えられる。さらに2016年に発表された角膜移植のglobal surveyでは自国内のアイバンクで必要献眼数が満たされているのは157か国中25か国でわずか15.9%であった1)。日本においてもドナー不足は深刻な状況にあるため,残念ながら必要とする患者全員に角膜移植を行うことはできない状況である。
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