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眼感染症の診断において,病原体の検出は治療を考える上で必要不可欠である。検出法のなかでも,細菌・真菌の培養検査や塗抹標本の鏡検検査は直接病原体を検出できるため,診断において有用な情報を提供してくれる。その検査を行ってくれるところが細菌検査室である。大学病院や大規模な病院には必ず存在し,我々をサポートしてくれる。しかしながら,実際のところ,検体を提出した後は細菌検査室に任せっきりにしてしまい,検査の過程や意義を十分に理解していない場合が少なくない。確かに,我々は学生時代に微生物学の実習のなかでそれらの手法について学習したが,それはやはり臨床に直結したものではなく,検査の過程や意義をしっかり理解しているかは疑問である。また,臨床の現場に出るとなかなかそれらの検査について勉強する時間や機会が少なく,細菌検査室とも検査をオーダーして結果をみるだけの関係に終わっていることが多い。
私も研修医のとき,とりあえず検体にラベルを張って提出するだけで,すべての菌が検査でき,培養検査で検出された菌は全て起炎菌だと信じていた。また,感染性角膜潰瘍の患者さんを担当し,オーベンの先生に角膜病巣部の塗抹標本鏡検をみせて頂いても,どれが菌でどれが炎症細胞なのかしっかりと理解することができなかった。しかし,感染性角膜潰瘍や眼内炎などの症例を経験する機会が増え,そのなかで起炎菌がなかなか検出できず,治療に苦慮する症例に遭遇するに伴って「どうして菌が検出されないのだろう?」と日々感じることが多くなった。そのなかで「菌の検出率を上げるためにはどのようなことをしたらよいのだろうか?」とか「塗抹標本を正確に鏡検できたら診断率も上がるのではないか?」などと考えるようになり,培養や塗抹標本などの基本的な知識を身につけたいという願望が強くなった。そこで教授に相談したところ,「大阪大学の感染症対策部の浅利先生に指導してもらうとよい」といわれ,大阪大学医学部附属病院の臨床検査室において約2週間研修をさせていただいた。
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