今月の臨床 妊娠中毒症—新しい視点から
新しい病因・病態論
6.妊娠中毒症と胎盤
畑 俊夫
1
1埼玉医科大学産婦人科
pp.139-142
発行日 2001年2月10日
Published Date 2001/2/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409904249
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はじめに
妊娠すると,胎児の発育に従って母体は全身の各臓器・各器官を使って2つの生命を維持するように瞬時の休みなく変化させ,それぞれの生命のために恒常性を保とうとする.したがって,その変化に正しく即応できないような基礎的病態(例えば糖尿病,抗カルジオリピン抗体保持者,高血圧家系,慢性腎炎,甲状腺機能亢進症,社会的要因など)を持っているものは,全身の各反応系の破綻を来たし易く,恒常性を保つのが難しくなることが多い.その恒常性維持破綻によって現れるものの一つに妊娠中毒症がある.妊娠中毒症と診断されて高血圧・蛋白尿・浮腫などの症状が一緒でも,母体の体質によって恒常性破綻を来たす臓器・器官がそれぞれの母体によって異なり,それらの症状の程度や胎児に対する影響など,多くの点で個々の妊娠中毒症に違いが見られる.
それらの違いは,妊娠初期の胎盤形成期にも差が出るとする意見が多くなった.着床初期にはtrophoblast cell columnから遊走した絨毛細胞が,脱落膜細胞と接して共存したり一部の脱落膜細胞を貧食したりしながら行動範囲を広げ,母体血管に到達して内皮細胞と置換したりする1).また,日が経つとラセン動脈周囲に群がって増殖したり,内皮細胞に置換したり,血管の中で増殖してplugを形成したりする.
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