今月の臨床 妊娠中毒症—新しい視点から
新しい病因・病態論
1.免疫学の視点から
藤井 知行
1
1東京大学医学部産科婦人科
pp.114-119
発行日 2001年2月10日
Published Date 2001/2/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409904244
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
はじめに
妊娠中毒症はわが国では,「妊娠に高血圧,蛋白尿,浮腫の少なくとも1つ以上の症状がみられ,かつ,これらの症状が単なる妊娠偶発合併症によるものでないもの」と定義されている.その病態は複雑で(図1),従来,学説の疾患とよばれており,発症機序も明らかにされていなかった.しかし最近,妊娠中毒症の本態を血管の病気ととらえ,発症の流れを説明する考えが有力になってきた(図2).すなわち,妊娠初期に何らかの原因により,絨毛細胞の増殖障害や胎盤の血管系の構築障害が発生すると,胎盤が正常に形成されず,その後の妊娠経過において胎盤が虚血状態に陥るようになり,絨毛細胞から種々の血管作動物質が放出されるようになる.この血管作動物質が全身の血管において,その内皮細胞の傷害をはじめとする血管の異常を引き起こし,妊娠中毒症が発症すると考えるのである.この病態発生の流れの最初を成す原因は未だ明らかでないが,その一つとして近年,母児間免疫応答の異常が注目されるようになった.
Copyright © 2001, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.