今月の臨床 妊娠中毒症—新しい視点から
新しい病因・病態論
2.血管内皮細胞の障害
正岡 直樹
1
,
山本 樹生
1
1日本大学医学部産婦人科学教室
pp.120-124
発行日 2001年2月10日
Published Date 2001/2/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409904245
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はじめに
妊娠中毒症は高血圧を中心として全身各臓器に多彩な病変をきたす.その病因・病態論ついては古くからさまざまに述べられ,学説の疾患とも言われていたが,近年その基本的病態は母児間適応不全状態であり,妊娠の負荷に対して母体,胎盤,胎児の適応能力が維持できなくなり臨床症状として表現されるとの考え方が有力である.また,その背景として妊娠中毒症妊婦においては血管内皮細胞障害,血管攣縮,凝固異常,血小板—好中球の活性化などが認められており,これらに起因する末梢循環不全の存在が指摘されている.特に血管内皮細胞は選択的物質の輸送—透過作用,抗血栓性,抗凝固性活性,血液細胞との相互作用,血管新生と組織再生・修復機能,炎症免疫調節作用のほかに,生理活性物質の産生により血管平滑筋細胞に作用し血管の収縮—拡張に与るなど局所での各種調節において極めて重要な役割を担っていることが明らかとなってきている1).本稿では,まず血管内皮細胞障害の妊娠中毒症への関与を示唆する各種所見を述べたうえで,さらに現在検討されている障害因子について概説する.
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