今月の臨床 性感染症—胎児から癌まで
性感染症と産婦人科疾患
7.梅毒合併妊娠
辻岡 寛
1
,
瓦林 達比古
1
1福岡大学医学部産婦人科学教室
pp.48-51
発行日 2001年1月10日
Published Date 2001/1/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409904229
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梅毒(syphilis)はスピロヘータ科のTreponemaPallidum(TP)と呼ばれる細菌による慢性全身疾患であり,性行為感染症の代表的疾患である.世界中に広く蔓延したが,戦後のペニシリンの汎用に伴い激減した.わが国でも罹患率,患者数ともに一貫して減少傾向にあったが,1985年(昭和60年)から一時増加傾向をみせ再び減少したものの,過去4年間では横ばいの状態である.1998年の罹患率は人口10万に対して0.4,患者数は553人と報告されている1).梅毒は性病予防法により届出義務があるが,感染の実体を把握することは困難であり,実際の患者数は報告されている数字とはかけ離れていると考えられている.近年の性行動の多様化をみると今後の動向に注意が必要な疾患の一つと言えよう.妊娠との関連については性病予防法第9条で妊婦に対する梅毒検査が義務化されており,現在原則として妊娠初期に梅毒血清反応検査が公費で行われている.梅毒の妊婦への感染は胎児の発育に重大な障害をきたすが,治療法が確立され,治療に対する反応も良いため,早期に診断し適切な治療をすることが重要な疾患である.
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