今月の臨床 ART最新情報—妊娠率向上のために
卵巣刺激・受精
7.当院における無精子症患者への対応
粟田 松一郎
1
,
田中 温
1
,
永吉 基
1
,
馬渡 善文
1
,
田中 威づみ
1
,
竹本 洋一
1
,
高崎 博幸
1
,
岩本 智子
1
,
鍬田 恵里
1
,
竹本 佳世
1
1セントマザー産婦人科医院
pp.1388-1394
発行日 2000年12月10日
Published Date 2000/12/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409904204
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はじめに
無精子症の患者で,精巣上体から精子を採取できる症例に対しては,男性不妊を専門とする大学病院泌尿器科においても,産婦人科との協力の下に,精巣上体精子や精巣精子を用いた顕微授精法による治療に取り組んでいる現状である.今やその恩恵を受けて待望の挙児を得ることのできたカップルの数は,かつて精路の吻合術による治療を受けて出生した児の数を遥かに凌ぐに至り,今後もその傾向はさらに続くであろう.多くの悩めるカップルに選択肢が広がり,妊娠できるチャンスが格段に高まったことは,喜ばしいかぎりである.
ARTが世に出る以前には吻合術や人工精液瘤による人工授精法などしか対応方法はなく,挙児希望のカップルにとってはそれに頼る以外に選択の余地はなかった.今日不妊治療施設に通院している閉塞性無精子症の患者数を考えれば,当時においてもかなりの数の潜在的な適応症例が存在していたと思われる.全国の大学病院や大病院の泌尿器科の中には当時から積極的に精路再建術に取り組んでいた施設もあったが,これまでに報告されている妊娠総数は,全国のARTに携わる不妊治療施設からのここ数年の間になされた妊娠報告数をかなり下回る数字でしかない.
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