連載 産婦人科クリニカルテクニック
ワンポイントレツスン—私のノウハウ
吸引遂娩器の婦人科手術への応用
佐藤 賢一郎
1
,
水内 英充
2
1新日鐵室蘭総合病院産婦人科
2みずうち産科婦人科
pp.1130-1131
発行日 2000年9月10日
Published Date 2000/9/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409904140
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吸引分娩の際に使用する吸引遂娩器を,帝王切開時の児頭の娩出の際にも利用する報告(臨婦産50:1331,1996)がなされている.われわれは,さらに腹式子宮全摘術(主として子宮筋腫,子宮腺筋症)の際の子宮の腹壁外への持ち上げ・牽引や卵巣腫瘍の腹腔外への持ち上げなどにも応用し,非常に有用と思われるのでご紹介したい.
腹式子宮全摘術の際の子宮の持ち上げや牽引については,通常長ペアン,コッヘル鉗子での子宮・付属器間の圧挫・牽引やミオーマボーラー、ミューゾー鉗子,子宮圧挫鉗子での子宮本体底部の把持が行われていることと思う.しかし,前者では子宮本体が大きい場合は持ち上げ・牽引が困難な場合があり,後者においては把持部の出血・裂傷が問題となり,子宮圧挫鉗子ではあまり大きな場合は使用困難であり,また腹壁外への持ち上げには役立たない.そこでわれわれの方法は,まず摘出子宮に見合うぎりぎりの分の腹壁切開を行い,吸引分娩用ソフトカップ(通常は中を使用している)を手術場の吸引チューブに連結し,子宮体部のできるだけ底部に近い部分に装着し,200mmHg程度の圧で吸引し牽引して腹壁外へ持ち上げを試みる.腹壁切開が小さいようであれば,子宮を牽引しながら多少の切開の追加を行えば,最小の腹壁切開創での腹壁外への持ち上げが可能となる.子宮を腹壁外へ持ち上げたら,有効に牽引できるように適当な位置にあらためて吸引カップを装着し直す.
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