今月の臨床 生殖内分泌と不妊診療の最新データ
不妊治療の問題点
1.OHSS
竹林 浩一
1
,
高倉 賢二
1
,
後藤 栄
1
,
野田 洋一
1
1滋賀医科大学産科婦人科
pp.602-607
発行日 2000年4月10日
Published Date 2000/4/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409904018
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
不妊症患者のうち排卵障害を主原因とする症例は15〜25%といわれている.一方,補助生殖医療技術assisted reproductive technology(ART)は近年急速に発展し,わが国における体外受精—胚移植(IVF-ET)は今や年間10,000周期をこえるようになるほど広く普及している.このような日常診療の場において,排卵誘発治療やART治療周期にhMGやhCGなどのゴナドトロピン製剤をはじめとする排卵誘発剤を用いることは,今や欠かすことのできない不妊症治療の柱の一つとなっている.
不妊に悩む婦人にとって排卵誘発剤は確かに多くの福音をもたらしてきたが,一方でOHSS(ovarian hyperstimulation syndrome:卵巣過剰刺激症候群)は多胎妊娠の問題とともに解決すべき重要な課題として残されており,これは治療注に内在する問題であると理解したうえで,OHSSの予防に努め,OHSSが起こってもその重症化を防ぎ,重篤な合併症の発症を予防することが最も重要である1).このようなことからOHSSの重症化を避けるべく,その早期発見,早期治療はもとより,排卵誘発剤使用の適応を慎重に選択し,投与法や投与量のさまざまな工夫が試みられている.
Copyright © 2000, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.