今月の臨床 ここが知りたい―PCOSの最新情報
不妊への対応
1.PCOSにおける排卵誘発法と問題点
4)OHSS
阿部 崇
1
,
竹下 俊行
1
1日本医科大学産婦人科学教室
pp.175-179
発行日 2010年2月10日
Published Date 2010/2/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409102275
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はじめに
卵巣過剰刺激症候群(ovarian hyperstimulation syndrome : OHSS)は,排卵誘発の過程で,多数の卵胞が大きく発育し,卵巣が腫大,卵胞からのエストロゲンが著しく上昇する結果,腹水貯留などをきたす状態と定義される1).OHSSは不妊治療における排卵誘発の重篤な合併症の1つであり,特に多嚢胞性卵巣症候群(polycystic ovary syndrome : PCOS)の患者でのOHSS発症リスクは非PCOSの不妊患者の6.8倍との報告2)もあり注意が必要である.
PCOSは,2007年に日本産科婦人科学会よりその診断基準が改定されたが,排卵障害を主体とする生殖機能の異常を認め,その背景には高アンドロゲン血症やインスリン抵抗性の関与が指摘されておりさまざまな性格をもつ疾患である.
PCOSの卵巣内には多数の小卵胞が存在し,排卵誘発の際に投与されるゴナドトロピン製剤に対する反応性も高い3)ため多くの卵胞が発育し,human chorionic gonadtropin(hCG)投与が引き金となり容易にOHSSを発症する.
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