今月の臨床 ホルモン療法のピットフォール—あなたの方法は間違っていませんか
更年期・老年期
2.子宮のある婦人にERTは
大澤 稔
1
,
水沼 英樹
1
1群馬大学医学部産科婦人科
pp.159
発行日 2000年2月10日
Published Date 2000/2/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409903929
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閉経後の骨量減少や高脂血症はエストロゲンの減少や欠落によって引き起こされる.したがって,閉経後女性の骨粗鬆症や動脈硬化症の予防にはエストロゲンの投与が必要となる.しかしながら,エストロゲンは子宮内膜に対して増殖作用を有しており,子宮を有する婦人にとって同薬のみを漫然と投薬し続けると子宮内膜増殖症や子宮内膜癌の発症率を上昇させるとされ,子宮のある女性へのエストロゲン単独投与は原則としてなされるべきではない.
エストロゲンのこのような作用を拮抗するためにはゲスターゲン製剤(酢酸メドロキシプロゲステロン:MPA)を同時に投薬する.MPAの抗エストロゲン作用はプロゲステロンの約100倍あり,この作用がHRTに伴う子宮内膜癌の発症の予防に貢献する.ゲスターゲン製剤内服中に倦怠感,抑うつ感,乳房緊満感などの症状が強く,どうしても内服できない場合には,十分なインフォームドコンセントを得たうえで投与するかあるいは子宮内膜に対する作用の少ないエストリオール製剤に変更するなどの処置が求められる.
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