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10歳代婦人と子宮癌検診
広井 正彦
1
1山形大学産婦人科
pp.514
発行日 1976年6月10日
Published Date 1976/6/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409205439
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子宮頸部の疾患,特に子宮頸癌は多くの疫学的調査によると,妊娠・分娩などの回数や,性交頻度などや,人種,社会経済的な因子が重要な役割をしていることが明らかにされてきている。一方,子宮頸癌の治療上に重要なことは,いかに早期に発見するかにかかつており,わが国でも県などが中心に集団検診を行なつているところが多い現況である。この際何歳から定期検診を施行すべきかが大きな問題となつてくる。
一般には10歳代の若年婦人での子宮癌は極めてまれであるとされ,事実,Bowingら1)はMayo Clinicでの子宮頸部の浸潤癌は20歳以下でわずか1例であり,1862年より文献上25例しかみられなかつたと報告しているほどその発現頻度が少ないとされていた。また,Christopherson2)も19歳以下の少女5,061例の検査でcarcinoma in situや浸潤癌がみられなかつたとしている。Huffman3)の"Gynecology of Childhood and Adolescence"によると小児病院や開業医院で数千人の少女を検査したが,腟スメアに異常がみられた例はなかつたとしているごときである。したがつて10歳代少女の婦人科診療に際し,腟スメアはおろか悪性腫瘍を念頭におくことも少なく,子宮癌集団検診にはこれらの年齢の婦人は除外することがほとんどである。
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