今月の臨床 生殖医療とバイオエシックス
最近の動き
1.生殖医療技術の最先端
星 和彦
1
,
笠井 剛
1
1山梨医科大学産婦人科
pp.1010-1015
発行日 1999年8月10日
Published Date 1999/8/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409903731
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SteptoeとEdwards1)による初めての体外受精児の誕生から20年が経過したが,体外受精—胚移植(in vitro fertilization-embryo transfer:IVF—ET)は生殖補助技術(assisted reproductive tech—nology:ART)のなかで重要な位置を占めるようになった.また,顕微授精,とりわけ卵細胞質内精子注入法(intracytoplasmic sperm injection:ICSI)は,画期的な男性不妊の治療法として脚光を浴び,実施症例・成功例ともにその数は加速度的に増加している.これらの生殖医療技術の確立は不妊治療研究の輝かしい成果であり,従来ならば妊娠することをあきらめざるを得なかった不妊カップルに大きな福音をもたらすとともに,ヒトの生殖生理の基礎研究領域においても生殖のメカニズムに関する新知見を集積しつつある.しかし,同時に,多胎妊娠や卵巣過剰刺激症候群などのARTに関連した副作用の問題や,配偶子,胚の提供,代理母,減胎手術,商業主義の介在,着床前診断など,生命倫理に直接関係してくる諸問題が提起されつつある.本稿では生殖医療の最先端技術と派生する諸問題について,概説してみたい.
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