連載 Estrogen Series
エストロゲン単剤療法(ET)は乳癌を増加させるか
矢沢 珪二郎
1
1ハワイ大学
pp.893
発行日 2012年9月10日
Published Date 2012/9/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409103153
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2002年に発表されたWHI(Women's Health Initiative)は最大規模の前方視ランダムコントロール試験であり,その結果は現在でも重視されている1).WHI試験は期間が延長されて現在でも継続されており,その1つにエストロゲン単剤使用(estrogen therapy : ET)群とプラセボ使用群を比較した試験がある2).エストロゲン単剤を使用するET群の女性は更年期後でしかも子宮摘出の既往をもつ.その対象人口は7,645名で,エストロゲン単剤使用期間は平均5.9年,追跡期間は平均11.8年である.
この両群における乳癌発生をみると,エストロゲン単剤使用のET群では155例にみられ,プラセボ使用群では199例であった.これはET群では毎年0.27%が,プラセボ群では毎年0.35%が乳癌を発生したことになる.ET群のhazard rationは0.77,(95%CI 0.62~0.95)であった.また,ET群での乳癌による死亡率はプラセボ群よりも有意に低下していた.さらに,あらゆる原因を含めた全体の死亡率でも,ET群で低下していた.
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