今月の臨床 内視鏡手術—どこまで進んだか
概説
2.内視鏡下手術の功罪
杉本 修
1
1大阪医科大学
pp.1454-1459
発行日 1998年12月10日
Published Date 1998/12/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409903472
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肉眼の及びえない部位の病変を視診によって確かめようとする内視鏡診の歴史は古いが,産婦人科診療に実用化され普及し始めてからたかだか30年ほどしかたっていない.多くの内視鏡が辿ってきたと同じように,骨盤内臓器病変を例にとっても,当科はもっぱら腹腔鏡やクルドスコープによる診断が主流であったが,次第にminimallyinvasive surgeryの構想のもとに直視下手術に目が向けられるようになった.1960年代にアメリカで卵管不妊手術に利用されて以来,ドイツ,キールのSemm教授の卓抜な機器の開発と精緻な技量によって子宮,卵管や卵巣のみならず,虫垂や胆嚢などの外科領域にまでその手術応用が広げられ,まさに燎原の火のごとく普及していった.わが国においても1974年に産科婦人科内視鏡研究会(現在の日本産科婦人科内視鏡学会)が20人あまりの同好の士で発足して以来,1,000人に及ぶ学会に発展し,その報告内容も診断的応用から手術的応用へと変わってきており,腹腔鏡下手術が開腹手術の例数をこえる施設もみられるようになってきた.侵襲の少ない内視鏡下手術の多くの利点が理解され,急速に普及してきたことは喜ばしいが,反面,症例の選択を誤ったり,技量が未熟であったりして取り返しのつかない副損傷に遭遇したり,患者のQOLをかえって損ねたりする事態が発生している.
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