今月の臨床 サイトカインと産婦人科
婦人科腫瘍とサイトカイン
2.癌の浸潤・転移とサイトカイン
藪下 廣光
1
1愛知医科大学産婦人科
pp.1082-1084
発行日 1998年8月10日
Published Date 1998/8/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409903376
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サイトカインとは,種々の細胞から産生され,細胞間の相互作用を媒介する生理活性物質の総称である.その特徴として,作用の多様性と相補性があること,特異的レセプターを介して極微量で作用を発揮することが挙げられる.サイトカインは,循環系を介して全身的に作用するホルモンとは異なり,レセプターを有する近隣の細胞に局所的に作用する.この際,産生細胞とレセプター保有細胞が同一の場合がオートクライン(auto—crine),異なる場合がパラクライン(paracrine)である.担癌状態などでは,癌細胞の産生するサイトカインが癌細胞自身にオートクラインに作用したり,また,周辺の非癌細胞の産生するサイトカインが癌細胞に,癌細胞の産生するサイトカインが非癌細胞にパラクラインに作用したりする.
癌の浸潤・転移の過程には,癌細胞の増殖,基底膜(細胞外基質)の破壊,血管新生,癌細胞の原発巣からの遊離脈管内侵入,転移臓器への生着などが考えられる.これらの過程には,癌細胞と宿主細胞との間で多くの相互作用があり,双方から放出されるサイトカインがこの相互作用を媒介する.すなわち,癌細胞が産生するサイトカインは,宿主の免疫担当細胞,血管内皮細胞,線維芽細胞などに作用して,局所の免疫機構や血管新生を制御して浸潤・転移に有利な環境をもたらす.
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