今月の臨床 卵管性不妊症への対応
診断
4.子宮鏡下選択的卵管造影法の治療的意義と実際
稲垣 昇
1
,
北井 啓勝
1
1社会保険埼玉中央病院産婦人科
pp.816-820
発行日 1998年6月10日
Published Date 1998/6/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409903309
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女性の不妊原因のなかで卵管因子は最も大きな割合を占めている.卵管は妊娠に至る過程のなかで,卵子の捕獲,受精の場の提供,受精卵の培養,受精卵の子宮への輸送と非常に複雑な機能を果たしているために,その障害は不妊の原因となりやすい.非観血的に卵管の疎通性を確認する検査としては,子宮卵管造影法(hysterosalpingogra—phy:HSG)と通気または通水検査が古くから汎用されてきた.とくに子宮卵管造影法は,形態的に左右の卵管内腔の状態が観察できることから卵管疎通性検査のなかでは最も有用であると考えられてきた.しかし近年,卵管通過性の有無についてのHSGの限界が指摘されるようになってきている.HSGで両側の卵管に通過性がないと判断された症例においても,妊娠することがあるということは臨床的に昔から知られていた.
したがって,より厳密に卵管の通過性を確認しようといくつかの方法が試みられてきた.頸管的に卵管内にチューブを差し込み選択的に造影剤を注入しようとする方法がその一つである1).また近年子宮鏡が発達し,外来で非常に簡易に行えるようになってきた.子宮鏡は子宮の内腔の病変を観察するように考案された医療機器であるが,子宮鏡下に卵管へ細径のチューブを挿入することも簡単に行えるようになった2).その結果,片側の卵管通過性や両側の卵管通過性がないと考えられた症例には偽陽性が多いという報告がみられるようになってきた3,4).
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