今月の臨床 早産対策—いま臨床医ができること
早産をどう理解するか
1.早産の疫学
藤森 敬也
1
,
柳田 薫
1
,
佐藤 章
1
1福島県立医科大学産婦人科
pp.659-663
発行日 1998年5月10日
Published Date 1998/5/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409903265
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早産は,未熟児出生,感染症など,われわれ周産期医が日常直面する数々の問題を多く含んだ病態であり,抗生物質,ステロイドの使用,tocolysisなど,早産管理に関してでもいまだcontroversialな点が多い疾患である.人工サーファクタントの使用に代表される未熟児医療の進歩に伴い,以前にはintact survivalが得られなかったpreterminfantに対してもかなり期待が持てるようになってきた.事実,早産の定義が妊娠24週からであったのが妊娠22週に改められたのは,ひとえに未熟児医療の進歩による.
早産の原因は単一であることは珍しく,いくつかの原因が絡み合って起こる場合が多い.最近では未破水症例にもかかわらず絨毛羊膜炎が先行し,その際,産生されたprostaglandinが子宮収縮を起こすという概念が定着している.しかしながら,切迫早産症例において羊水培養の陽性率が低率であること,抗生物質投与による妊娠延長の効果が期待できないことなど,切迫早産を感染症と決めるには今後のさらなる検討が必要と言わざるを得ない.いずれにせよ,いくつかの原因の可能性を考慮しつつ,十分にその病態を検討,把握することが重要と思われる.
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