今月の臨床 産科と凝固異常
凝固線溶異常の治療
2.肺血栓塞栓症の治療
櫻川 信男
1
1富山医科薬科大学医学部臨床検査医学
pp.340-341
発行日 1998年3月10日
Published Date 1998/3/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409903212
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肺血栓塞栓症(pulmonary thrombo-embolism:PTE)は,高齢での手術後とか妊婦産褥時などの凝固亢進状態にありながら運動制限を強いられる症例に出現し,下肢深部静脈血栓(deep veinthrombosis:DVT)が塞栓子となり肺動脈が閉塞されることに起因する場合が約90%を占め,他は脂肪片,空気,腫瘍細胞や羊水・絨毛などに起因し,本邦での致死的発生頻度は2.4人/1,000人であるが,高齢化社会に突入した今日では漸次増加しているが,年間PTEによる死亡者が15〜20万人の西欧に比較して少ない.40歳以降が約80%を占めて中・高年者に多発し,性差はないが,約60%は入院中に長期間の安静臥床後に起き上がったり,トイレでの排便姿勢でDVTから誘発される.なお,本症の誘因としての基礎疾患にプロテインCやS欠乏症,アンチトロンビンIIIやヘパリンコファクターII欠乏症,あるいは抗リン脂質抗体症候群などが存在するので検索する1-3).
急性症と慢性症に区分できる.慢性症は肺塞栓症が繰り返し発症して肺高血圧が持続するもので,急性症が救急処置の対象となる.
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