今月の臨床 先天異常をどう診るか
画像診断でどこまでわかるか
3.妊娠中期以降の診断と異常の特徴—胸腹部
前田 博敬
1
1九州大学医療技術短期大学部
pp.32-37
発行日 1998年1月10日
Published Date 1998/1/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409903137
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胸部
1.胸部の正常像
胎児の胸部を観察する場合に最も基本的な断面は,胎児心臓の4腔断面(four chamber view)を含む胸部横断面である(図1).この断面は,横隔膜の頭側で脊椎に直交する横断面を描出することによって得られる.この断面が胸部の異常を評価するうえで有用である理由のひとつは,心臓の胸腔内での位置や軸が最も観察しやすく,これらの偏位があった場合に胸部異常の診断の糸口となるからである.いまひとつは,胸郭周囲長の測定が本断面を基準としており,妊娠の進行にともなって直線的に増加し1),加えて胸郭周囲長と心臓径の比が全妊娠期間で一定であることから2),これらを定期的に測定することが,胸部異常の発見につながるからである.
正常胎児の心臓は,胸部の左側に位置し心尖部が45度の角度で左前胸部を向いている.右心房,右心室は,それぞれ左心房,左心室の腹側に位置している.両心房は,ほぼ同様の大きさで描出される.反面,両心室は妊娠32週まではほぼ同様の大きさであるが,それ以降は右心室がやや大きく描出される.左心室は円錐状に近い形状で内面は平滑であるのに対し,右心室は半楕円の形成を呈し内面は粗である.両心房は,薄い膜様構造物として描出される心房中隔により隔てられている.心房中隔の中央部には卵円孔を認め,これをふさぐように左房を開く弁状物が観察される.また,右房に入る肺静脈も観察される.
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