今月の臨床 男性不妊をどうする
診療上の必須知識
3.受精前後の精子
佐藤 嘉兵
1
1日本大学生物資源科学部応用生物科学科
pp.1160-1166
発行日 1997年11月10日
Published Date 1997/11/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409903080
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ヒトを始めとする哺乳類の受精に際して,精子は機能的(生理学的・形態的)な変化が引き起こされる.前者はsperm capacitation(精子の受精能獲得)と呼ばれ,後者は先体反応(acrosomereaction)と言われている.このcapacitationが比較的簡単な培養液で誘発可能となって体外受精(IVF)が実用化したといっても過言ではない.哺乳類の受精は受精時に精子は変化するが,卵子は第二減数分裂中期の状態で分裂が停止したまま排卵されてくるが,精子のような卵子とのinterac—tionの前に大きな変化を示すことはない.受精前後の精子の変化が受精そのものに,あるいは以後の発生に影響を与えることを考えると,IVFあるいは顕微授精(ART)を行う場合に再度検討する必要があると思われる.少なくとも現在のところ,IVFあるいはARTでの胚の発生率は自然受精のそれに比べて低率であり,その原因についていろいろ指摘されているが,本質的な原因については明らかにされていない.ここでは主に精子の受精能発現とそれに影響を与える要因について,応用の基礎として整理することを目的とした.
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