今月の臨床 着床
着床不全の病態と治療
4.抗精子抗体
山野 修司
1
,
鎌田 正晴
1
,
青野 敏博
1
1徳島大学医学部産婦人科
pp.50-54
発行日 1997年1月10日
Published Date 1997/1/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409902803
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抗精子抗体とは
精子細胞膜上に表現される精子特異抗原や精漿中の特異抗原などは女性にとっては外来抗原であり,性交により女性体内に持ち込まれる.精子が通過する女性内性器には多くの免疫担当細胞が存在することが知られており,また性交数時間後に腹水中に多数の精子が存在することが腹腔鏡検査で観察されている.したがって精子が子宮内膜や腹腔内で免疫担当細胞に捕食され,その抗原情報を免疫担当リンパ球に伝えるものと考えられる.礒島らは14歳以下の女児1,000名以上を対象に血清中の精子不動化抗体を測定したところ1例も陽性者を検出できなかったことから,精子不動抗体は精子と接触することにより産生されると結論した1).しかし,精子に暴露したすべての女性に抗精子抗体が産生されるわけではなく,筆者らが見いだした免疫グロブリン結合因子を初め,プロスタグランディンなど精漿中に存在する種々の免疫抑制因子により抗体産生が抑制されていると考えられる2).
抗精子抗体には精子不動化抗体や精子凝集抗体など,精子機能を障害する抗体と精子結合抗体がある.このなかで不妊と最も関係するのは精子不動化抗体で,当科の原因不明不妊患者の18%に検出された.精子凝集反応は非特異反応が多く,不妊症患者以外にも高率に認められる,またイムノビーズ法などによる精子結合抗体は,不妊と関係がない抗体がかなり含まれていることがわかっている3).
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