今月の臨床 ホルモン療法—新しい動向を探る
副作用とその対策
5.HRTと発癌
加藤 紘
1
1山口大学医学部産婦人科
pp.1314-1315
発行日 1996年10月10日
Published Date 1996/10/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409902698
- 有料閲覧
- 文献概要
高齢化とともにHRTはますます盛んになった.しかしホルモン活性が多様であるだけに,思わぬ副作用をきたすことも多い.その一つが発癌である.確かにエストロゲン投与は心疾患や骨折の予防に有効で平均余命を延長させるが,一方で子宮体癌を増加させる.たとえプロゲスチン(プロゲストーゲン)剤を併用しても乳癌は増加する1).ルグウィンの童話に,魔法使いが弟子に向かって,「一箇所で雨を降らせると地球上の思わぬ所で思わぬ天候異変を引き起こしてしまう」と魔法の恐ろしさを説く話があるが,HRTにも相通じるところがあり,癌という言葉がセンセーショナルであるだけに議論も多い.しかし,治療に副作用は付き物で,副作用をおそれるあまり優れた治療効果を捨てるのも惜しい.副作用対策を論じることがたいせつで,HRTでは癌対策が重要なポイントとなる.
Copyright © 1996, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.