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はじめに
これまで,ホルモン補充療法 (hormone replacement therapy : HRT)は,産婦人科医だけでなく広く一般の女性も,骨粗鬆症による骨折の発症率を低下させるのみならず,心筋梗塞,脳卒中のような心血管系疾患を予防することにより,閉経後女性のQOL改善のために大いに貢献すると信じてきた.WHI報告,Million Women Study以後,HRTに対する評価,考え方が本邦を含めて国際的に変化しつつある.WHI報告後に日本更年期医学会により実施されたHRTに対するアンケート結果によると,WHI報告後にHRTを中止したと回答したのは6.9%であり,現在本邦でHRTを受けている女性の割合は約3%といわれるので,HRT療法の現状にはさほど影響はないと考えられる.しかしHRTの内容,投与期間に関してはそれぞれ結合型エストロゲン(CEE)の量を減らしたり,貼付剤やエストリオールに変更したり,2~5年以上は行わない,患者の希望に合わせるなどの変化がみられている.どのような疾患を適応としてHRTを施行するのかに関しては,WHI以後,高脂血症,動脈硬化,アルツハイマーの予防が著明に減少したが,更年期障害様症状,卵巣摘出後諸症状,骨量減少・骨粗鬆症予防,腟萎縮・老人性腟炎,性交痛,早発閉経・去勢後の予防投与などはWHI以後でも変化を認めていない.一方,最近SERMが新しいHRTとして紹介されることがあるが,一部で誤解を招いている.例えば,ラロキシフェンが更年期障害の患者で処方され,Kaufmann療法でラロキシフェンをEP錠の代わりに用いるなどが聞かれる.本稿のテーマが「新しいHRT」であるので,誤解を避けるために本稿ではSERMについては触れず,将来のHRTの1つとして低用量HRTについて解説する.
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