今月の臨床 妊娠と血液
5.妊娠とレオロジー(赤血球変形能,白血球変形能)
江口 勝人
1
1岡山大学医学部産婦人科
pp.568-573
発行日 1995年5月10日
Published Date 1995/5/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409902114
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
●はじめに
レオロジーrheologyのrheo—はギリシア語のrheos“流れる”に由来するもので,物質の変形と流動の科学(流動学)のことである.一般に,生体における血液循環は次に示すようなHagen—Poiseuilleの法則に従って成り立つ.ここでPは管の中を流れる流体の圧,ηは流体の粘性,Lは管長,Qは流量,rは管の半径を示す.つまりηは血液粘度.Qは心拍出頃,rは抵抗血管の半径であり,これらが血圧を規定する因子として重要であることがわかる.血液の流動性に影響する因子としては,粘度,ヘマトクリット,赤血球変形能,血漿蛋白(とくにフィブリノーゲン,マクログロブリンなどの高分子蛋白)などが挙げられ,しかもこれらは相互に関連し合っている.血液は多量の血球成分を有する蛋白溶液の流体であるが,最近主要な有形成分である赤血球並びに白血球の変形能力(血小板は硬く変形しない)と循環機能の関係が注目されているため,本稿ではレオロジーの観点からそれらの妊娠時における臨床的意義について解説する.
Copyright © 1995, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.