薬の臨床
シスプラチン化学療法における悪心・嘔吐に対するグラニセトロンの制吐効果
大和田 倫孝
1
,
鈴木 光明
1
,
小川 修一
1
,
玉田 太朗
1
,
佐藤 郁夫
1
1自治医科大学産婦人科
pp.367-370
発行日 1995年3月10日
Published Date 1995/3/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409902081
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シスプラチンをkey drugとした化学療法によって惹起される悪心・嘔吐に対して,5—HT3受容体拮抗剤グラニセトロンの制吐効果を,従来のメトクロプラミド,ベタメタゾンの併用療法によるhistorical controlと比較検討した.婦人性器癌化学療法症例40例を対象に,グラニセトロン40μg/kgをシスプラチン投与1時間前と3時間後の2回点滴静注した.グラニセトロン投与群ではシスプラチン投与後24時間以内の急性嘔吐に対する効果は,WHOの毒性スケールのgrade 0, 1症例が48%(19/40)を占め,メトクロプラミド,ベタメタゾン併用投与群10%(2/20)に比べて,有意に優れた制吐効果を示した(P<0.001).一方,24時間以降の遅延性嘔吐に関しては,grade 0, 1症例はグラニセトロン症例で60%,メトクロプラミド,ベタメタゾン併用群で55%と両者の間に有意な差は認められなかった.グラニセトロン投与による副作用の検討では,頭痛5例,便秘,浮腫が各4例に認められたが,いずれも軽微であった.また,血算,肝,腎機能にも異常はみられなかった.グラニセトロンは,シスプラチンを含んだ化学療法によって生じる悪心・嘔吐,とくに急性嘔吐に顕著な効果があることが確認された.しかしながら遅延性嘔吐に対しては十分な効果は認められなかった.
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