今月の臨床 GnRH療法—刺激と抑制
基礎知識
1.GnRHの分泌調節機構
舩橋 利也
1
,
貴邑 冨久子
1
1横浜市立大学医学部第二生理学
pp.272-274
発行日 1995年3月10日
Published Date 1995/3/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409902053
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哺乳類のGnRH遺伝子は,4つのエクソンからなり,第2エクソンが,シグナルペプチド,開裂部,10個のアミノ酸からなるGnRHペプチド,およびGnRH関連ペプチド(GAP)の一部,を規定している.第1,3,4エクソンは第2番目のようには保存されていないという.中枢神経系以外にも,胸腺,リンパ球,卵巣,胎盤などにGnRHmRNAが存在することが報告されている.また,GnRH遺伝子領域からアンチセンスmRNAが転写され,それらが視床下部に存在することが報告されているが,詳細はいまだ明らかではない.
中枢神経系においては,GnRHは神経細胞で合成される.その神経細胞体は,ヒトやサル等の霊長類では主として視床下部内側基底部に存在するが,ラットなどの齧歯類では,より前方の内側視索前野に主として存在する.細胞体からの軸索は正中隆起部外層で一次毛細血管叢に終末する.血管内に分泌されたGnRHは下垂体門脈血流を介して下垂体前葉に到達し,ゴナドトロピンの分泌を刺激する(図).このGnRH神経細胞の起源は嗅上皮で,発生が進むとともに鼻中隔を越えて脳内を移動し,所定の位置まで到達する.Kallmann症候群では,このGnRH神経細胞の脳内への移動が障害され,嗅覚障害を合併する性腺機能の低下が生じる.
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