今月の臨床 IUGR診療
IUGRの病態
6.胎盤病理の特徴
秋葉 和敬
1
1総合母子保健センター愛育病院産婦人科
pp.268-271
発行日 1994年3月10日
Published Date 1994/3/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409901638
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子宮内胎児発育遅延(IUGR)の成因は,一般には母体の栄養不良による母体側要因,胎盤での物質障害による胎盤要因,胎児自身の遺伝的素因あるいは器官形成の障害による胎児要因の3つに大別される1).Foxらは低出生体重児の胎盤を光顕的に検討し,25%の症例に胎児血流の不足を示す絨毛内血管減少・絨毛間質の線維化・syncitialknotsの過形成の所見を認め,残りの50%にcy—totrophoblastの過形成と絨毛基底膜の肥厚を伴う虚血像を報告たている2).またAlshulerやAlthabeらはcongenital infectionを伴うIUGR児の胎盤を調べて,chronic villitis・血栓・線維化などの病理学的変化を胎盤の機能低下の原因としている3,4).しかしながら,これらの所見はいずれも胎盤の機能低下を表すものではあるものの,IUGR胎盤に共通した特徴的な病理学的変化は認められないとされていた.その理由として,症候群であるIUGRには胎盤要因以外の発症因子があること,胎盤絨毛組織構築が胎齢や胎内・胎外環境に応じてきわめて変化に富むことによると考えられる.
本稿では,胎盤絨毛のうち物質交換に最も影響が大きいと考えられる胎盤終末絨毛terminalvilli(TV)の毛細血管構築に対して,新生児のproportionに基づき形態解析を行ったわれわれの知見を紹介する.
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