今月の臨床 頸癌,体癌—診療の現況
診断
11.子宮体癌の術中細胞診
西谷 巖
1
,
高村 郁世
1
Iwao Nishiya
1
,
Ikuyo Takamura
1
1岩手医科大学医学部産婦人科教室
pp.1424-1426
発行日 1993年12月10日
Published Date 1993/12/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409901540
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子宮体癌の予後にかかわる重要な因子は,①筋層浸潤の深さ,②頸部間質浸潤の程度,③両側付属器や骨盤壁あるいは腹部リンパ節転移の有無,さらに,④病理組織学的分化度などがあげられ,術中の腹腔洗浄細胞診は予後因子として一定の評価は得られていなかった。子宮体癌の臨床進行期別分類(FIGO,1982)(表1)の中にも,腹腔洗浄細胞診は,これまで期別診断に必要な検査法として取り上げられていない。これに対して,卵巣癌では,腹水細胞診および腹腔洗浄細胞診陽性の場合は,癌細胞の腹腔内播種を示す所見として重視され,これまでの臨床進行期分類の改変にかかわらず,つねに腹水細胞診陽性は,予後を左右する重要な因子として評価されてきた。子宮体癌治療の第1選択は手術療法であり,多くの症例の術中,術後診断が可能であることから,FIGOより,新しい術後進行期別分類(FIGO stages−1988 revi—sion)(表2)が提案され,わが国でも広く利用されつつある。この中には,腹腔洗浄液の細胞診陽性をⅢ期亜分類の条件として明記している。しかし,これが子宮体癌の臨床進行期別診断に混乱を生ずることも考えられるので,腹腔洗浄細胞診の問題点も含めて述べたいと思う。
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