今月の臨床 治療にてこずる感染症
MRSA
15.MRSAの増加と化学療法の反省
加藤 賢朗
1
,
川名 尚
1
Yoshio Kato
1
,
Takashi Kawana
1
1東京大学医学部附属病院分院産婦人科
pp.1079-1081
発行日 1993年9月10日
Published Date 1993/9/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409901440
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黄色ブドウ球菌は健常者の鼻腔,咽頭にも見いだされることのある細菌で,傷口から侵入すると皮膚の軟部組織感染症を引き起こすことで知られている。そのなかでメチシリン(ペニシリナーゼに分解されにくい耐性ブドウ球菌用ペニシリン)に耐性となったものはMRSA(Methicillin Re—sistant Staphylococcus Aureus)と呼ばれる。しかしながら,MRSAはメチシリンだけではなく第一,第二,第三世代のセフェム系を含めほとんどすべてのβ′—ラクタム薬に耐性を示し,さらに多くのマクロライド系やアミノ配糖体にも耐性を示しているため,この菌による感染症を発症した場合,治療できる薬剤に乏しいことにより大きな問題となっている。長期入院患者,重症の熱傷,術後患者などのように局所あるいは全身の感染防御機構の低下している患者では腹膜炎,肺化膿症,髄膜炎,敗血症などの深部感染が起こりやすく重篤な結果を招くことになる。
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