今月の臨床 ホルモン補充療法;HRT
HRTの実際
17.更年期障害
郷久 鉞二
1
Etsuji Satohisa
1
1札幌医科大学産科周産期科
pp.850-852
発行日 1993年7月10日
Published Date 1993/7/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409901374
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わが国の女性の平均寿命は世界一となり80歳を超えており,更年期の40,50歳代はまだ人生のちょうど中点の時期に過ぎない。lonliness, qualityof life, sexual lifeなどのライフスタイルに深く関わった診療を女性の残りの半生に行うことによって,婦人科医として分娩や手術に追いまわされることのない新たな診療分野が開けるのではないかと思っている。実際,日本の女性は年を取ると性生活の障害のみならず,秘かに尿失禁に悩み,腰が曲がって,骨折し寝たきりになる率が外国より高い。
メルボルン大学のデナスタイン教授によると,更年期にある一般の婦人の調査で,オーストラリアでは全女性の80%に症状がみられ,10%が治療を要する。しかし,インドのヒンズー大学の調査では50%,しかも部族(ラージプート族)によってはほとんど症状がないというように社会・文化で大きく異なっているということ,ホルモン治療は確かに性生活や心理面にも好影響をもたらすが,内分泌学的研究はいまだ不十分であり,心理学者,社会学者,生物学者などの学問分野にまたがる研究が必要であると,大がかりな電話追跡調査を行う疫学研究を行っていた。また,HRTに対する選択権は本人にあるので,十分な教育や情報提供がたいせつといって何回も市民講座を行って率直に意見の交換を行っていた。
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