医学講座
更年期障害
赤須 文男
1
1金沢大学医学部産科婦人科
pp.73-77
発行日 1970年11月1日
Published Date 1970/11/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661917662
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はじめに
女子では個人差もあるし,社会情勢の影響もあるが,45歳前後に性機能はいちおう終わる。ネズミなどであれば,性機能が自然に終止すれば間もなく死亡していく。けれども人の場合は,このような状態になっても死ぬとは限らないし,性生活も可能である。私は「性腺は種族維持に,副腎は個体保持に必要不可欠な生体防衛能をおわされている」ことを力説した(1955年)。元来種族が大切なのか,個体が大切なのか,これは生物学的見地や,哲学的見解のうえではかなり議論のあるところであろう。
しかし生物界の現象をみていると,種族維持に重点がおかれ,子孫を残す責任を果たせば個体は死滅してゆくのが一般のようである。人の場合は多少異なり,すべての人が健康にして幸福な生活をする権利が与えられている。もっとも国々の思想によっては,これが認められない場合もある。わが国でも,生活の苦悩のなかにあっても「生めよ殖やせよ」の規則のもとにたくさん子どもを産まされた時代もあった。上述したネズミなどのことを考えると,性腺と副腎とがきわめて密接な関連下におかれ,性腺の機能停止は副腎の機能停止に結びついている感がある。人ではおおいに異なっている。
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