今月の臨床 ホルモン補充療法;HRT
HRTの背景
2.更年期障害
郷久 鉞二
1
Etsuji Satohisa
1
1札幌医科大学産科周産期科
pp.807-809
発行日 1993年7月10日
Published Date 1993/7/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409901357
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更年期障害とは
更年期にある婦人が自律神経失調症状を訴えて来院した場合,卵巣機能の低下を主体とした狭義の更年期障害の他に,心身症,神経症,うつ病がその中に含まれていることが多い。そのためホルモンなどの単一な治療法では効果が得られないことがある。しかし,心身症,神経症,うつ病では,ホルモン療法を必要としないということではなく,他治療と併用して効果を期待できる。更年期障害は諸家によってさまざまな解釈がある。更年期に卵巣ホルモンの分泌低下にともなって起こる血管運動神経症状を中心とする症候群と卵巣機能のみに限定している人もいるが,1976年の第1回閉経に関する国際会議において同意された更年期症候群は,病態生理あるいは病因論的立場からみて,①卵巣機能の衰退,②環境に関する社会・文化的因子,③個人の性格構造に基づく精神・心理学的因子などがからみあって起こる症状を包括している。心身がからみあっているので,器質的除外診断のような心身二分論的な考え方ではなく,心身一如の考え方,すなわち,医師が患者をみるとき,身体の一部として内分泌や組織の検査をするのと同次元,同レベルで心理・社会的な検査も行うべきである。これはそれほどむずかしいことではなく,時間を少しさいて単に身体症状のみでなく,②や③について問診することである。
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