今月の臨床 外陰の診かた
疾患のポイントと私の治療法
21.外陰白斑症
柏村 正道
1
Masamichi Kashimura
1
1産業医科大学産婦人科
pp.745-747
発行日 1993年6月10日
Published Date 1993/6/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409901341
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概念
外陰白斑症は,掻痒感を伴う外陰の白色の病変であるが,その用語の使用に際しては多くの混乱がある。白斑症は,元来口腔や舌に生ずる白斑状の病変に対して与えられた名称であるが,次第に他の部位の同様の病変にも用いられるようになってきた。混乱の最大の原因は,この掻痒感を伴う白色病変に多くの異なる病理学的所見が含まれていることである。表1は,外陰の非腫瘍性病変における用語の時代的変遷であるが,硬化性苔癬,外陰萎縮症,白斑症,増殖性外陰炎などの多くの用語が,1975年にジストロフィーに総称されることになった1)。この時点で白斑症という用語は正式には消失したが,臨床的にはなお使用されているのが現状である。ジストロフィーは,病因が栄養障害によるものであるという考え方から命名されたものであるが,反論も多く,1987年には,萎縮性の病変である硬化性苔癬と増殖性の病変である扁平上皮過形成とに分けることが提唱されている2)。従来,ボーエン病,単純癌,ケラ紅斑症と呼ばれていた前癌病変は,1975年に扁平上皮内癌に統合され,さらに1987年,周辺の異型上皮を包括して外陰1波内腫瘍に統一されることになった。以上の経緯から考えると,外陰白斑症にどのような病変を含ませるべきかは不明であるが,本稿においては硬化性苔癬と扁平上皮過形成を中心にして述べる。
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