今月の臨床 産科外来検診マニュアル
妊娠初期
13.頸管無力症
佐賀 正彦
1
Masahiko Saga
1
1聖マリアンナ医科大学産婦人科
pp.497-499
発行日 1993年5月10日
Published Date 1993/5/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409901268
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頸管無力症は,妊娠中期以降にみられる習慣流早産の原因のひとつで,外出血や陣痛などの切迫流早産徴候を自覚しないにもかかわらず子宮口が開大し,胎胞が形成されてくる状態である。既往妊娠時に受けた陳旧性頸管裂傷や,先天的な頸管組織の異常により,妊娠中期以降になると妊娠が維持できなくなり,頸管が開大し,続いて胎胞が膨隆し,流早産へ移行する.通常は無症候性である1)。
しかし一般的には慢性的な弱いが持続的な子宮収縮による症例が含まれることが多い、、頸管無力症例の流早産機序について考えてみると,妊娠初期,羊膜腔(胎嚢)は子宮腔内の一部に存在し,子宮峡部は管状構造を保っているが,妊娠14週頃になると被包脱落膜が壁脱落膜と癒合し絨毛膜腔は消失し羊膜腔は子宮腔のほぼ全体を占めるようになり,また子宮峡部は展開して子宮体部と一体となって卵形になる(図1)。したがって羊膜腔が子宮頸部上端に達し,羊膜下極が子宮頸部に対し物理的な力として作用するのは妊娠14週以降ということになる。こうしたことから妊娠初期では一般に診断は困難である。
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