今月の臨床 子宮全摘出術—私のコツ
腟式子宮全摘出術
8.基靱帯処理—無結紮処理
伊東 英樹
1
Eiki Ito
1
1札幌医科大学産婦人科
pp.156-158
発行日 1993年2月10日
Published Date 1993/2/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409901176
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腟式子宮全摘出術における基靱帯処理—無結紮処理については,明石によって1961年に報告された。しかし教室においても初期の段階では基靱帯は二分して縫合していたが1),症例を積み重ねた結果,以下の理由により無結紮切断法に改変された。それは膀胱子宮靱帯,仙骨子宮靱帯も同様であるが,とくに基靱帯は子宮頸部にきわめて接近して切断すれば,出血はほとんどないか,あっても比較的少量の静脈性のものであること。また基靱帯をたとえ結紮しても結合織の退縮で,後に滑脱していることが多く,術式としては無結紮切断法を行い,この後,出血部があれば結紮をするほうがむだがなく,合理的であるという考え方である。
この後,基靱帯は子宮頸部にきわめて接近して切断すれば,出血はほとんどないか,あっても比較的少量の静脈性のものであることの裏づけを山田2)がしている。これは子宮旁結合織内血管の研究で,子宮側縁から0.5cm以内では動静脈ともに切断された血管から出血する危険性のある血管はないとの結果であり,基靱帯処理—無結紮処理の妥当性を証明している。この後も,腟式子宮全摘出術における基靱帯処理—無結紮処理に関しては,教室より多くの報告3-5)があるが,いずれも塞靱帯を子宮頸部にきわめて接近して一括切断することにより,術式の単純化,平易化を示すものであり,切断後に出血部があってもこれを結紮しない術式ではないことをとくに強調しておく。
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