今月の臨床 抗癌剤
効果判定法
7.癌治療学会基準,カルノフスキー分類
大村 剛
1
,
渡辺 肇
1
,
古川 隆正
1
,
長谷川 絵美
1
,
平野 孝幸
1
Gou Ohmura
1
1東邦大学大森病院産婦人科
pp.1180-1183
発行日 1992年10月10日
Published Date 1992/10/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409901028
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医学は,死に対する挑戦である学問のなかでも,死を回避できる実践的技術体系として発展してきた。死の一経過を辿る癌の認識は,皮膚をはう増殖の形状からKtrebs(蟹)と表現されてから,人の眼による観察が診療の基本となっている。現在の癌治療は癌を見つけて切り取る手術療法が原則であるが,肉眼観察には限界がある。10個の悪性細胞を術中肉眼で探索してこれを切除することはできず,手内職の限界を感じ他の科学分野に遅れているような印象をぬぐえない。かといって医療機器が進歩した現在にあっても,10個の細胞は検出不可能である。したがって取り残したかも知れない癌細胞を抗癌剤でたたいても,検索不可能である以上効果は判定できず経過を見るしかない。癌の治療にあたっては,メスは刃物,抗癌剤は毒であり,心あらざれば犯罪であるという認識を持ち,現代医療の限界を熟知し,その鑑識眼を養い外科的技術と化学的治療法の効果をあげる地道な努力と,再発してくるかも知れない不安に対する誠意を示す必要がある。
臨床医学とは,限界のある中で治療効果を向上させる努力過程であり,忍耐なくしてはできない仕事である。当然その治療効果の判定基準はわかりやすくかつ,効率的であることが要求される。
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