今月の臨床 高年婦人科—更年期から老年期へ
加齢による変化
7.精神心理上の問題点
長谷川 和夫
1
Kazuo Hasegawa
1
1聖マリアンナ医科大学神経精神科
pp.917-919
発行日 1992年8月10日
Published Date 1992/8/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409900957
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一般的にみて退行期とこれに続く老年期は,暦年齢からみると50歳以降をさすが,思春期と同じように人生のいくつかの節目をつくる時期ともいえる。退行期また老年期とはいっても,その終末の時期を除くと,まだまだ社会的には働き盛りともいえる時期も含まれていて,必ずしも衰退という概念では律しきれない。ただ女性にとっては,身体機能の面で閉経という明らかな変化がおこり,大きな生物学的役割である生殖機能を失うことになる。また社会生活面でも子どもは自立して旅だちを始め,夫婦2人の“空き巣”の状況を体験することになる。育児・子女の教育,家庭の構築などにむけたエネルギーをどこに,どのように向けてゆくかは精神心理上の観点からみて大きな転換を求められることになる。人生の後半,下り坂を歩む意識は,老年期に向けてすべての人に公平に生まれてくる。このような時期におこりやすい精神保健上の問題をいくつかあげて,その対応を述べてみたい。
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