今月の臨床 卵巣がん—疫学から治療まで
化学・放射線療法
26.維持化学療法のあり方
井上 正樹
1
Masaki Inoue
1
1大阪大学医学部産婦人科
pp.849-851
発行日 1992年7月10日
Published Date 1992/7/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409900938
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卵巣がんは,その解剖学的位置より症状が出現しにくく,また早期に腹腔播種やリンパ節転移をきたすことより,早期発見の困難な腫瘍と言える。また,手術的に完全切除し得ても,化学療法で完全寛解が得られても再発し,予後不良の転帰をとることがしばしばである。したがって,治療の原則は早期発見および手術療法とそれに引き続く化学療法を軸にした集学的治療であることは言を待たないが,手術あるいは化学療法で腫瘍の消失をみた症例でも,cisplatinを主体とした併用化学療法(PAC療法)を充分に長期にわたって,維持投与することが必要であると考えている。
消化器癌,子宮癌に対して行われている経口剤による維持化学療法が卵巣癌で有効とする確実な報告はなく1),また細胞生物学的にも低濃度の抗癌剤に永く浸されることは薬剤耐性能を獲得する可能性もあり,安易な経口投与はさけるべきである。ただし,この問題は,今後のcontrolled ran—domized studyの結果に待ちたい。
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