原著
HPV感染の有無によって異形成の転帰に差が生じたか?—後方視研究からみた子宮頸部病変進行群と消退群におけるHPVの関わり
今野 良
1,2
,
佐藤 信二
1
,
矢嶋 聰
1
Ryo Konno
1,2
,
Shinji Sato
1
,
Akira Yajima
1
1東北大学医学部産婦人科学教室
2岩手県立磐井病院産婦人科
pp.745-748
発行日 1992年6月10日
Published Date 1992/6/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409900910
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本研究は異形成組織にHPVが存在することによって進行,消退に差が生じるのかを探ることを目的に行った,高度および中等度異形成45例を対象にin situ hybridizationとpolymerase chain reactionによってHPV DNAを検出した。異形成別では高度異形成の90%,中等度異形成の60%に,転帰別では進行群の81%,消退群の69%にHPVを検出した.HPVと転帰の関係をみると,HPV検出群高度異形成の50%が進行したのに対し,50%は消退した。非検出群高度異形成からの進行例はなかった。中等度異形成ではHPV検出群,非検出群の進行,消退はともに約30%,70%であった。HPVの有無による病変の転帰および転帰が決まるまでの期間に統計学的な差は認めなかった。以上の結果は高度異形成はHPVと関連が強いが,HPV陽性高度異形成といえども必ずしも癌に進行しないことを示した。HPVは病変進行に意義がないのではなく,ほとんどの子宮頸癌の必要条件として存在するからだと思われる。
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