MEDICAL SCDPE
精子免疫
島田 信宏
1
1北里大学病院産科
pp.56
発行日 1971年6月1日
Published Date 1971/6/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1611204157
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1898年にLandsteiner,Metchnikoff両博士は,動物に精子を注射すると,その精子に対する抗体が作られることを発表しました。つまり,精子が抗原として作用して,それに対する抗体が産生されるという免疫現象が生じる理論で,一般に私たちが細菌感染や予防注射の考え方として習ってきたものと同じです。しかし,産科学にはこの精子免疫はたいへん重要な意味をもっていることがわかってきました。
ここにある一組の夫婦がいたと考えてみましょう。妻の体内には夫の精子が性交により入ると,妻のからだの中には夫の精子に対して抗体ができる可能性があります。もしこの抗体が新たに侵入してきた精子に作用すると,精子を打ちくだき,妊娠能力をなくしてしまうのではないでしょうか。こんな抗体のいたずらが理論上は考えられます。そうすると,妻の体内にできた夫の精子に対する抗体はこの夫婦間の重要な不妊因子のひとつになってしまいます。つまり,不妊症の原因のひとつに精子免疫があるということになる。
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