特集 今日の家族計画
最近の避妊法—とくに経口避妊薬について
鈴木 秋悦
1
1慶応義塾大学医学部産婦人科教室
pp.35-40
発行日 1970年12月1日
Published Date 1970/12/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1611204027
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I.はじめに
現在,世界の人口は30億を越え,なお,年間増加率も約2%と,驚異的な増加を示しており,このままの増加率で人口がふえていくとしたら,マルサスの人口論を待つまでもなく,早晩,35年ごとに世界の人口は倍増するという運命にあり,米国の人口問題研究者の警告の如く,人類は深刻な食糧難となることは明らかであるといわれている。最近,生殖(reproduction)に関する学問が,世界的に急速に進められてきている意義も,人口調節にかんする医学的責任への提唱から,なんとかして,安全で,確実な避妊法を確立したいという問題の現われであるということができる。
受胎調節にかんする過去の長い歴史を回顧した場合,各時代の社会的変遷に伴って,数多くの受胎調節法が応用されてきており,それらの中では,現在,なお,広く応用されている方法も少なくないが,一貫していえることは,現在においても,まだ,安全で確実な方法は発見されておらず,常に新しい避妊法への夢が続いてきたということである。したがって,今日における新しい避妊法といっても,それでまったく完成されたものであるという意味ではなく,明日の避妊法への試金石であるにすぎない。
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