原著
新生児における聴覚誘発脳電位(Auditory Brainstem Response)の出生直後の変化
山崎 実好
1
,
庄野 秀明
1
,
大神 正幸
1
,
下村 恭子
1
,
伊藤 雄二
1
,
杉森 甫
1
Miyoshi Yamasaki
1
1佐賀医科大学産婦人科教室
pp.1199-1204
発行日 1991年10月10日
Published Date 1991/10/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409900594
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
ヒト新生児の聴覚伝導路の出生直後の機能変化を,ABRを測定し,胎外環境への適応過程と分娩時のストレスの影響の両面から検討した。対象は58満期産正常新生児(予定帝王切開:5名)とした。測定時期は出生後30分以内,2,4,8,24時間後,さらに2日,4日,1ヵ月後の計8回とした。音刺激には20Hz,80 dBのクリック音を使用した。その結果,Ⅰ波潜時は出生後30分以内の1.82±0.23msec(mean土SD)から2時間後の1.69土0.26msecへと最も急速に短縮した(p<0.05)。Ⅲ—Ⅴ波間潜時は出生後30分以内の2.63土0.27msecから24時間後の2.47±0.23 msecへと有意に短縮した(p<0.01)が,Ⅰ—Ⅲ波間潜時には有意差を認めなかった。また,経腟分娩の群と予定帝王切開群の間には全ての潜時に差を認めなかった。以上により,経腟分娩によるストレスの聴覚伝導路への影響は否定され,出生直後の聴覚系の機能変化は,末梢側の急速な胎外環境への適応過程と中枢側上位の緩徐な発達(適応)過程からなることが示唆された。
Copyright © 1991, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.