Japanese
English
総説
人工内耳Cochlear Implant(CI)の現在とAuditory Brainstem Implant(ABI)の未来
Cochlear Implallt Today and Auditory Brainstem Implant in the Future
加我 君孝
1
Kimitaka Kaga
1
1東京大学医学部耳鼻咽喉科
1Department of Otolaryngology, Hospital, Faculty of Medicine, The University of Tokyo
キーワード:
cochlear implant(CI)
,
hearing loss
,
auditory brainstem implant(ABI)
Keyword:
cochlear implant(CI)
,
hearing loss
,
auditory brainstem implant(ABI)
pp.103-114
発行日 1999年2月1日
Published Date 1999/2/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1406901391
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はじめに
人工内耳1)(cochlear implant:CI)および聴性人工脳幹(auditory brainstem iniplant:ABI)2)は,原因は違うが聴力をまったく失った患者に再び実用的にコミュニケーションを可能にさせる夢のような外科的治療技術であり,20世紀の医療と工学が完成させた輝かしい成果である。両者とも内部装置と一体になった電極を,人工内耳の場合は蝸牛の回転の鼓室階へ,ABIの場合はNF2(neurofibromatosis type 2)の聴神経腫瘍摘出術のときに延髄の表面の蝸牛神経背側核相当の部分に移植するもので,術後,経皮的に電磁誘導で信号を送る外部装置につなぐと,失われていた聴覚が再びよみがえる。歴史的には人工内耳のアイデアは古くからあったが,1970年代になって初めて実用化し,現在に至るまで改良が続けられている。現在まで世界では人工内耳術は2万人以上に行われ,その半分は小児である。わが国では約50施設で1,200人に手術が行われ,小児は15%程度である。ABIは両側聴神経腫瘍による聴力廃絶者を対象に開発されたもので,人工内耳が実用化してから間もなく試みられるようになり,現在,米国とヨーロッパで治験中であり,約40名に対して移植手術が行われた。
ここでは,歴史的な発展と現状,そして今後の課題について解説する。
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