特集 今日の子宮内膜症
薬物療法の選択と限界
多賀 理吉
1
Michiyoshi Taga
1
1横浜市立大学医学部産婦人科
pp.865-871
発行日 1990年10月10日
Published Date 1990/10/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409900168
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子宮内膜症の治療は,薬物療法,手術療法,薬物—手術併用療法の3つが基本である。このうち薬物療法は,薬物だけで治療する場合も,手術療法との組み合わせで用いられる併用療法でも,使用される薬剤はホルモン剤が主体である。これは,本症の病態の基本である異所性子宮内膜組織の増殖,進展が,ホルモン(エストロゲン)デペンデントであるからにほかならない。そして,これまで本症の治療薬の候補として,その病巣を萎縮,退行させる作用効果を有するさまざまなホルモン剤に試行錯誤が繰り返されてきた。子宮内膜症のホルモン療法は,まさに有効なホルモン剤の開発の歴史といってよい。このことは,エストロゲン療法,偽妊娠療法,ダナゾール療法,そしてGn RHアナログ療法が,それぞれ約10年毎に登場してきた過去の変遷の中にみることができる。今後も,さらに効果的な新しいホルモン剤の開発は続くであろう。しかし,このようにすぐれたホルモン剤が登場してその種類が増加し,ホルモン療法が多様化してきても,ホルモン剤のみで本症を完治させることは不可能に近く,また,薬理作用が強力であればある程,副作用の問題も無視できず,ホルモン療法にもおのずから限界があることも事実である。そこで本稿では子宮内膜症の薬物療法(ホルモン療法)の選択と限界について概説する。
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